最近、AIイラストを使ったグッズやLINEスタンプ、NFTアートまで見かけるようになりました。
生成系AIの進化で、誰でもワンクリックでイラストを作れる時代。
ですが、その画像を「売る」となると、ちょっと立ち止まって考える必要があります。
まず大前提として、「AIが自動で作っただけのイラスト」には、日本の現行法では基本的に著作権は発生しないとされています。
これは文化庁の見解でもあり、著作権法が「人間の創作活動」を前提にしているからなんですね。
最初、AIでイラストを量産して、スキマ時間にストックサイトで売ってみたことがあります。
初月で数百円稼げて「おっ、いけるかも」なんて思ったんですが、あるときSNSで「AIイラスト販売は違法じゃないの?」というツイートを見て、怖くなって調べ直しました。
AI生成物に著作権は発生するのか?
じゃあ、そもそもAIで生成されたものには、本当に著作権がないのか。
そのあたり、誤解も多い部分です。
AIが自動で生成したイラストや文章には、基本的には著作権は発生しません。
理由はシンプルで、「創作したのが人間じゃないから」。
法律の世界では「人間の思想・感情を創作的に表現したもの」だけが著作物になります。
でも、実際には多くのAI画像が「人間の介入ありき」で使われてるんですよね。
たとえば、以下のようなパターンです。
シチュエーション | 著作権が認められる可能性 |
AIに指示だけ出して自動生成 | 低い |
画像を手作業で修正・加工した | 高い |
他の素材と組み合わせた | 高い |
絵コンテや構図を緻密に指定 | 場合による |
たとえば、プロンプト(指示文)を工夫して何度も出力を試し、ブラシで描き加えたり、Photoshopでパーツを合成したり。
こういうプロセスが入ってくると、「人間の創作性」が加わるので、著作物として認められる余地が出てくるわけです。
ここ、誤解しがちなんですが、「AIを使った=全部ダメ」じゃないんですよ。
大事なのはどこに“人の手”が入ったか、どこまで創作性があるかってことです。
著作権とは?
著作権というのは、簡単に言うと「創作した人が、自分の作品を守るために持つ法律上の権利」です。
絵を描いたり、曲を作ったり、物語を書いたり、そうした表現には時間やアイデア、努力が詰まっています。
その成果を、他人に勝手に使われたり、無断でお金を稼がれたりしないようにするための仕組みが、著作権です。
ぼくも昔、自分で描いたイラストが無断でSNSに転載されていたことがあり、正直かなりショックでした。
そのとき初めて「著作権って、本当に大事なんだな」と実感しました。
著作権が守るのは、あくまで「形になった表現」です。
つまり、頭の中にあるアイデアだけでは著作権は認められません。
たとえば、「空飛ぶ自転車の話」というアイデアは誰でも思いつくかもしれませんが、そのアイデアを元に小説やマンガにした瞬間に、著作権が発生します。
どこまでが“表現”で、どこまでが“アイデア”なのか。これはけっこう曖昧な部分でもあります。
だからこそ、トラブルにならないよう慎重に扱う必要があります。
登録しなくても自動的に発生する
「著作権って、役所に登録しないと発生しないんじゃないの?」と聞かれることもありますが、実は違います。
著作権は、作品が完成した瞬間に自動的に生まれます。
誰にも見せていなくても、日記のような文章であっても、創作的な表現であれば著作権は成立しています。
この点は、特許や商標と大きく違うところです。
だからこそ、自分が創ったものには思っている以上に強い権利があるということを、ぜひ知っておいてほしいです。
著作権を持つと何ができるのか
著作権を持つと、自分の作品をどう使うかをコントロールすることができます。
たとえば、自分以外の人が勝手にコピーしたり、ネットにアップしたり、商売に使ったりするのを禁止することができるようになります。
また、自分が誰かに使わせる場合でも、「こういう用途ならOK」「ここまでなら加工してもいい」など、条件をつけることもできます。
これは創作した人の自由です。
だからこそ、創作物を使うときには、著作権者の許可が必要になるわけですね。
著作権の有効期間
著作権はずっと続くわけではありません。
日本では、基本的に「著作者の死後70年」で権利が切れます。
これは永遠ではないということでもあります。
たとえば昔のクラシック音楽や明治時代の小説などが自由に使えるのは、この「著作権の切れた状態」だからなんです。
ただし、企業が著作権を持つケースや、共同制作の場合などは、別のルールが適用されることもあるので、状況によっては調べる必要があります。
“引用”との違い
「ネットで見つけた文章や画像を、ちょっとだけ使うなら問題ないんじゃないの?」という声もあります。
たしかに“引用”として使うのは可能ですが、これは非常に厳しい条件があります。
引用とは、あくまで「主役は自分の文章であり、補足や比較として他人の作品を使う」というもの。
著作物の大部分を丸ごと転載したり、自分の主張がほとんどない場合は、引用とは認められません。
自分もブログを書くとき、引用を使うことがありますが、そのたびに「これは本当に引用の条件を満たしているか?」と何度も見直すようにしています。
万が一にも、無断転載と誤解されたら信用に関わりますからね。
著作権が今、改めて注目されている理由
AI時代に突入して、著作権の在り方はすごく複雑になっています。
AIが作った作品に著作権があるのか? その元になったデータの権利はどうなるのか?
こうした問いは、以前の常識だけでは答えきれないものになっています。
でも、こういう時代だからこそ、基本に立ち返って「著作権とは何のためにあるのか」を知ることが、すごく大切だと思います。
創作する側にも、使う側にも、共通して求められる“リテラシー”なんじゃないでしょうか。
AIイラスト販売のリスクと対策
ここからが本題。AIイラストを「販売」するときに気をつけたいポイントです。
正直に言って、全体としてはまだグレーゾーン。けど、明らかにアウトな例も存在します。
たとえば、AIが作った絵が、既存のアニメキャラや有名なイラストレーターのタッチに似すぎていた場合。
これは著作権侵害やパクリ認定される恐れがあります。
ぼくの知人も、Midjourneyで作った画像をグッズにして通販しようとして、レビューで「〇〇のパクリじゃん」と書かれ、販売停止になったことがあります。
意図せず似てしまうことがあるのがAIの怖いところなんですよね。
また、AIで生成したことを明かさず「自分で描いた」と偽って販売した場合。
これは「著作者名詐称」と呼ばれ、場合によっては法的リスクに発展します。
ちょっと整理してみましょう。
行為 | 違法リスクの有無 | 理由 |
AIで生成した画像をそのまま販売 | 原則として低いがリスクあり | 著作権がないためだが、類似画像や商標に注意 |
他人の作品に似たAI画像を販売 | 高い | 著作権・意匠権の侵害の可能性 |
自作と偽って販売 | 非常に高い | 著作者名詐称・詐欺の恐れあり |
加工して創作性を加えたAI画像を販売 | リスクは低め | 創作性が認められれば著作物になる |
つまり、完全に「違法」とは言い切れないけど、やり方次第ではリスクが高くなるケースもある。
だからこそ、売る側がちゃんと自分でルールを意識する必要があります。
実際にぼくが気をつけていることをシェアしますね。
- まず、AIで生成した画像はすべてオリジナル保存。出力日時とプロンプトのログを取っておきます。
- 元ネタがありそうな画像(ファンタジー系、アニメ風)は使わないようにしています。
- 素材として使う場合は、必ず自分の加筆や構成を加えてから公開します。
- 「AI使用済」とはっきり記載。購入者が安心できるようにします。
こうするだけで、トラブルの種をかなり減らせます。
AI時代の“創作”とは?
このテーマを掘っていくと、ちょっと哲学っぽい話にもなってきます。
AIで生成されたイラストに、自分の手を加える。
そのとき、「それは自分の作品か?」と聞かれたら、あなたはどう答えるでしょうか。
ぼくは、最初は「いやAIの力だし、自分の作品とは言えないかな」と思っていました。
でも、何十回もプロンプトを書き直して、構図を調整して、Photoshopで背景を描き足していくうちに、だんだん“自分の色”が出てきた気がするんですよね。
このあたり、法律と感覚のズレがあるというか。
法的には創作性がなければ著作物じゃない。でも、創作ってそんな単純な話でもない気がするんです。
たとえば料理。
レトルトカレーを温めただけなら「自分の料理」とは言えないけど、スパイスを足して、トッピングして、盛り付けを工夫したら、それはもう“自分の一皿”になるじゃないですか。
AI画像も、ちょっと似てる気がします。
まとめ
ここまでの内容を踏まえて、AIイラスト販売を安全に行うためのコツを最後にまとめておきます。
- 著作性を加える:AI任せで終わらせず、加筆・加工・構成で自分の創作性を足す。
- 出力記録を残す:プロンプトと生成日時をスクショやログで保存。
- 商標チェック:似たデザインが既に使われていないか、検索して調べる。
- 販売サイトの規約を読む:BOOTHやBASEなど、AI画像の販売ルールをしっかり確認する。
- 正直に伝える:「AI生成」「一部AI使用」など、表記で透明性を持たせる。
これからもっとAIが当たり前になって、たくさんの人が気軽に“表現者”になれると思います。
でもだからこそ、ただ便利に使うだけじゃなくて、自分なりの創作を重ねていくこと。
それが、長く愛される作品づくりにつながるんじゃないでしょうか。
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