1年前の冬、スマホの通知が止まらない夜がありました。
DeepSeekという名前が急に流れてきて、性能と価格の話でタイムラインが埋まり、半導体株まで一緒に揺れました。
あの空気を、日本では「DeepSeekショック」と呼ぶ人が増えました。
そして2026年の春節前です。
中国のAI企業が新モデルをまとめて出してきて、話題が今度は「ロボット」へ移っています。
モデルの強さだけではなく、工場や倉庫、店の床を動く機械として見せ始めた感じがします。
ここからは、DeepSeekショックから1年の流れを、数字と現場の話でつないでいきます。
DeepSeekショックとは

DeepSeekショックの正体は、派手な宣伝ではなく、料金表と速度の組み合わせでした。
1日で株価が動いた
DeepSeekショックが広がった時期は、2025年1月ごろの話として語られます。
米国のAI企業が出す最先端モデルと比べて、DeepSeekのモデルは「十分に使えるのに安い」という評価が一気に増えました。
結果として、AI向けGPUで知られるNVIDIAの時価総額が1日で約5930億ドル分消えた、と報じられています。
数字だけ見ると現実味が薄いのに、株価チャートは本当に崖みたいに落ちていて、そこが怖さの中心でした。
私も当時、記事の下書きをしながらXの流れを追っていて、画面の右上に出る相場の数字が妙に気になりました。
普段なら「AI界隈が盛り上がってる」で終わるのに、その夜は「計算資源の値段そのものが変わるかもしれない」と感じてしまったんですよね。
たぶん、同じ感覚になった人は多かったはずです。
「安い」は気合ではなく仕組みで作れる
「安い」を口だけで終わらせない仕掛けとして、DeepSeekはAPIの課金単位を「100万トークンあたり」で明確に出し、さらに同じ文章の前半が繰り返される使い方だと料金が下がる仕組みまで用意しています。
DeepSeekのAPI料金ページでは、deepseek-chatの入力が100万トークンあたり0.28ドル、同じ前半が再利用されるキャッシュヒットなら0.028ドルと書かれています。
この「前半が同じなら安くなる」は、長い資料を何回も質問する実務に刺さります。
決算資料を読みながら「売上の内訳」「利益率」「翌期の見通し」を順番に聞くと、毎回同じ資料本文を入れることになります。
その重い部分が再利用される。DeepSeekの説明だと、同じ前半部分があればキャッシュヒットとして扱う、という書き方です。
価格の話がロボットに直結する理由
ここでロボットにつながります。ロボットは、目の前の映像やセンサー値を細かく見ながら、次の動作を決め続けます。
倉庫の通路を曲がる、棚の前で止まる、箱の向きを直す、こういう小さな判断が何百回も起きます。
AIの呼び出しコストが下がると、現場でAIを回す回数が増やせます。
結果として、ロボットが「止まる」「迷う」「人を呼ぶ」回数が減る。ここが地味に効きます。
春節の新モデルラッシュ 中国AIの今
【⚡️速報】また中国から高性能のAIモデルが公開。
アリババがDeepSeek v3超えのオープンソース「Qwen2.5-Max」を発表
DeepSeekが採用したMoEという効率良くAIモデルを学習できる手法を活用。一度革新的なモデルができると一気に世界中でブレイクスルーが起こる印象。にしても最近中華強すぎ。詳細↓ pic.twitter.com/cIlEM3is7u
— チャエン | デジライズ CEO《重要AIニュースを毎日最速で発信⚡️》 (@masahirochaen) January 28, 2025
春節前に新モデルが一斉に出てくる流れは、2026年も続いています。
2026年2月の空気 春節前に同時多発で出す
ロイターは2026年2月、中国のAI企業が春節に合わせて新モデルを出し、DeepSeekの登場で刺激を受けた流れだと伝えています。
Zhipu AIが新モデルやエージェント系の新サービスを出し、ByteDanceも動画生成モデルSeedance 2.0の発表が見込まれる、といった具体的な動きが並んでいました。
春節って「めでたいから出す」というより、人が集まってスマホを見る時間が増えるから、試されやすい季節なんですよね。
帰省の新幹線、親戚の家のリビング、夜更けの布団の中。そこでアプリが軽く動くか、文章が賢いか、ロボットが踊るか。
派手だけど、見られる場所はかなり生活寄りです。
DeepSeekの最新動向
2026年2月11日、DeepSeekがWebとアプリで更新され、コンテキストウィンドウが128Kから1M(100万)トークン級に上がった、という報道が出ました。
中国メディアでは「三体」三部作の約90万字を一度に処理できる、という例まで出ています。
ここがややこしいのは、DeepSeekの公式API料金ページにはコンテキスト長が128Kと書かれたまま、という点です。
つまり「Webとアプリで先に試している部分がある」「API側は別タイミングで揃える可能性がある」という見え方になります。
ここを混ぜて書く記事が多いので、読む側が疲れます。私も最初は「100万トークン対応って、もうAPIでもできるのか」と早合点しかけました。
「100万トークン」は何が変わるのか
100万トークンが本当に効くのは、「本を丸ごと読ませる」よりも、「仕事で出る長い資料を切らずに扱う」場面です。
例えば、M&A契約書、製造の不具合報告書、問い合わせのメールが積み重なったスレッド。
こういう文章は途中で切ると、言い回しの条件や例外規定が消えます。
条件が消えた要約は、現場で一番嫌われます。
ロボット側でも同じです。
工場で1台の協働ロボットが作業する時、直前の10秒だけ見ても意味が薄いことがあります。
直前の工程、部品のロット、温度、作業者の交代タイミング。
こういう文脈を、丸ごと食わせて判断させたい。
コンテキストが伸びるのは、そういう欲に直撃します。
中国AIがロボットで再攻勢
ロボットの話になると、急に夢物語っぽくなりがちですが、2026年の中国は「テレビの舞台」と「産業の現場」を同時に動かしています。
春節のテレビでロボットを踊らせる
ロイターは、春節の盛り上がりの中で中国のロボット企業が目立つ場を取りにいっている、と報じています。
上海のAgibotは200台以上のロボットを使ったショーを配信し、Douyinで推定140万人が見た、という話まで出ています。
さらにCCTVの春節ガラにはUnitree、Galbot、Noetix、MagicLabなどが参加するとされています。
踊っているロボットを見て「おもちゃだ」と笑うのは簡単です。
でも投資家と自治体と大企業の購買部門が同じ映像を見るのが春節です。
カメラの前で転ばない二足歩行、腕の動きの滑らかさ、バッテリーが持つ時間。
ここは、買う側がチェックしたい項目と意外に重なります。
工場と倉庫で増えるのは
現場で先に増えるのは、全身が人の形をしたロボットより、搬送ロボットとアームの組み合わせです。
棚の前まで自走して、腕で箱を掴み、コンベヤに置く。
床はタイヤで走り、腕だけが器用。これなら作業導線が短くなり、人の腰を壊しにくい。
中国のロボット産業について、JETROは「人型ロボット産業が量産段階に入った」という文脈で、メーカー数が140社超という規模感や、標準化の委員会づくりまで触れています。
政策と資金が一緒に動いている、という書き方です。
この環境だと、工場の倉庫担当が「試しに10台」から始めるハードルが下がります。
導入の稟議が早くなる、これが一番強い変化です。
まとめ
DeepSeekショックから1年で見えた勝ち筋は単純です。
モデルの性能を盛るより、料金表と運用の仕組みを先に出す。
長文を扱うならキャッシュで安くする。
Webとアプリで先に試して、反応を見てから広げる。
DeepSeekはこの流れを繰り返しています。
弱点もはっきりしています。
100万トークン級の話が出ても、APIの表記が追いつかないと、開発側は仕様を決めにくいです。
ロボットは安全の都合で、動作を止める条件が多いので、仕様が曖昧だと採用されません。
そこは中国企業でも同じです。
それでも、春節の今の空気を見ると「中国AIはまた攻めに来た」と感じます。
2025年は料金と性能で世界をざわつかせ、2026年はロボットの映像で一般の目まで取りに来ています。
DeepSeekショックを「一発屋」で終わらせない動きが、ここまで揃ってしまうと、次に気にするべきは「どの国が勝つか」より「どの仕事の段取りが先に変わるか」になります。
そこを先に想像できた人から、準備が早くなるはずです。










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